自社に合った業務アプリケーションは自社で・自分で作る方向へ

チームの作業

社内のとある業務をシステムを使うことにより改善・効率化するような場合、大きくは次のような方法があります。

  • パッケージ製品を購入する
  • クラウドサービスを利用する

これらは既に用意されている機能を利用する形になるため、自社の業務をシステム・サービスにあわせるという部分が出てきます。自社の業務をサービスにあわせることが出来るのならそれがよいですが、自社の業務は大きく変えずに実現したい場合もあります。そのような場合、

  • SIerやシステムを専門とする会社に依頼する

という方法を取り自社独自のシステムを構築することで解決が可能です。しかし、この方法は1から全ての機能を構築することになるため、コストがかかります。

 

では、コストを抑えて自社にあった業務システムを作ることはできないのかというと、そうではありません。

業務システムを作成することが出来るサービス、を利用することで、自社で欲しいシステムの機能は自分で作ることができ、自社で作るためコストも抑えられます。今回はこの業務システムを作成することが出来るサービスについて、利用することでどのようなメリットがあるのか、どのようなサービスがあるのか、どのような作り方があるのかをご紹介します。

業務アプリケーション作成サービス利用のメリット

業務システム作成サービスを利用して業務システムを構築するメリットは何でしょうか?主に、次のようなものがあると思います。

プログラミングの知識が無くてもシステムを作れる

通常、システムを構築する場合はプログラミング言語と呼ばれる専門の言語を用いて開発をする必要があります。例えば、

  • JavaScript
  • Ruby
  • Java
  • Python
  • PHP
  • VBA

などがそれにあたります。ExcelやAccessのマクロはVBAで作っていますね。

業務アプリケーション作成サービスでは、これらのプログラミング言語を使うことなくシステムを作ることが出来るものが多いです。ドラッグ&ドロップで部品を画面上に配置することでアプリケーションを作れるサービスも多いため、システムを簡単に作ることが出来ます。そのため、プログラミング言語を覚えることに比べて学習コストを大幅に抑えることが出来ます。

学習コストが抑えられるということは、システムを作り始めてから動かしてみる(試してみる)までの時間が短縮できることにも繋がります。トライ&エラーで試していくことも可能なため、はじめに作ったものを後から変更するというのも、比較的簡単に出来きます。環境の変化に対応しやすいという点があります。

業務アプリケーション導入・運用コストを抑えられる

業務システムを構築する場合、導入前に環境の準備が必要です。例えば、

  • サーバを立てる
  • サーバに業務システムに必要なアプリケーションをインストールする(Webサーバ、データベースなど)
  • サーバにその他必要なソフトをインストールする(セキュリティソフトなど)
  • 障害発生を想定した対策を入れる(地震対策、停電対策、フェイルオーバーなど)
  • サーバの保管場所の確保

などが挙げられます。また、環境を準備してその上に業務システムを入れたとしても、「保守」が発生します。

  • サーバダウン時の影響調査と復旧対応
  • 障害発生時の原因調査と対応

これらを全て自社で対応するのは、システムを専門とする会社ではない場合は分からない部分も多く、難しいのではないでしょうか。AWSやWindows Azureなどクラウド環境のサーバを利用することで準備・保守面での労力を下げることも可能ですが、社内の誰かがサーバ管理をする必要性は出てきます。

クラウド型の業務アプリケーション作成サービスを利用することで、これらの環境周りの作業についてはサービス提供元に全て丸投げすることが可能になります。つまり、自社に必要な機能をシステムとして作る・改修するという部分にのみ注力できるようになります。

業務改善を実現するための手段が増える

システムを使わずに業務を効率化しようとした場合、良く使われるのはExcelかと思います。それは何故かと考えた場合、必ずと行っていいほどエクセルはPCに入っているという点もありますが、エクセルのVBAやマクロを使うことでやろうと思えば色々と出来てしまうという点も大きいかと思います。Excelでやり切れてしまうためシステムは入れていない、という会社も中にはあるのではないでしょうか。

業務アプリケーション作成サービスを使うということは、ある業務の課題や問題を解決するための方法としてExcel以外に手段が1つ増える、ということを意味しています。これまでExcelしか解決方法が無かった状態から別の手段が追加されることになりますので、Excelを使うことで課題となりえる次のような事象から開放されます。

  • 色々なファイルが増えてしまい、どこに何があるのか把握しづらくなる
  • 間違って保存してしまってデータが上書きされる
  • ファイルが重い、固まる、急に壊れる
  • 引継ぎができない(エクセル職人からの引継ぎの場合は特に)

また、Excelでは実現が難しいがサービスを使うことで実現できる、という部分も出てきます。これは、ツールを使って業務課題を改善できる範囲が広がるとも言えるかと思います。

社内に人が育つ

業務アプリケーション作成サービスを使って自分で作り業務改善を進めて行くようになることで、サービスの使い方の習熟度が上がる点もありますが、サービスを活用した業務改善が次第に出来るようになっていくというメリットもあります。業務改善は業務を知っている現場担当者が行っていくのが一番であり、少しずつ改善をしていくことで改善に対する意識の向上も狙えると思います。

業務アプリケーション作成サービスの一例

では、どのような業務システム作成サービスがあるかというと、次のようなものが挙げられます。

  • FileMaker(FileMaker, Inc.)
  • kintone(サイボウズ株式会社)
  • nyoibox(株式会社NIコンサルティング)
  • Forfuncy(グレープシティ株式会社)
  • CELF(SCSK株式会社)
  • desknet’s NEO(AppSuite)(株式会社ネオジャパン)
  • Salesforce(株式会社セールスフォース・ドットコム)

この他にも自分で業務システムを作れるサービスはありますが、良く聞かれるのはこのあたりかと思います。

調査と洞察

自社で業務アプリケーションを作るにあたり必要なこと

業務アプリケーション作成サービスは、自社に合ったシステムを作れるサービスです。そのため、「既に存在する機能を利用する」というよりは「必要な機能を作っていく」ということが必要になります。誰が必要な機能を作るのかというと、社内の誰かということになります。

サービスを使う社内の人材の確保と教育

業務アプリケーション作成サービスに限ったことではありませんが、何か新しいサービスを使う場合、まずそれを使いこなしていく担当者を一人任命し、サービスを使いこなせるようにしていく必要があります。

担当者が自主的にサービスを見つけてこれを使いたい!というような場合はサービスの習熟も自主的に進むため問題ありませんが、サービス選定者と担当者が違う場合、担当者への意識付けや理解が進んでいるかのチェックが必要になります。担当者自身がそのサービスが業務の効率化に使えるものだという認識を持って行う必要があります。

プログラミングの知識を必要としないとはいえ、理解にはある程度時間がかかりますし、そのサービスのメリットを引き出してうまく使っていくには慣れが必要な部分もあります。その点を考慮して担当者の理解促進を見ていく必要があります。

メイン業務の片手間としない

業務アプリケーション作成サービスを評価のためにお試しで使っている場合を除き、本格的にサービスを使って業務改善を進めていくようになった場合、その担当者は業務改善を片手間の作業としてアサインしないようにしましょう。社内のExcel職人のように「それを使える人」の努力によって業務が変わったとしても、評価に何も反映されないのであれば、担当者のモチベーションにも影響しますし、作る作業にも影響が出ます。

プロジェクトやチームを立ち上げて専任化する、あるいはこれまでの業務と半々で取り組めるような体制を整えて、回りがサポートできるようにするのも良いかと思います。

手段として使う

サービスで色々なことが出来るようになると、業務アプリケーションをどんどん作っていこうとなります。慣れてくれば、少し複雑な処理をするシステムを作ることもあるかもしれません。色々な機能を持ったアプリケーションを構築していくのは良いですが、入れてお終いにならないように注意したいところです。

特に、システムにデータを入れる(溜める)ということがまず導入に当たってはネックになってきます。パソコン操作に慣れていない人や忙しくて入力が出来ずに後回しになっている人などがいる場合、対応策をきちんと考えていく必要があります。

「システムを入れれば必ず使われるし、効果も出てくる」

このように考えるのは少し危険です。「システムを導入すること」と「そのシステムを使っていくこと」は別です。システムを入れてもうまく活用されずに結局は使われなくなってしまった、というような会社があるのは、この点への対応がされているかの違いともいえるかと思います。

業務アプリケーション作成サービス利用の注意点

業務システム作成サービスを入れれば何でも業務課題を解決できるかというと、そうではありません。

複雑な機能の構築は向かないことが多い

プログラミングをせずにドラッグ&ドロップで業務システムを作ることが出来るようなサービスの場合、手軽さの反面、複雑な処理を作ることが出来ないという部分もあります。ある機能をつくるのに向き・不向きがありますので、その点を踏まえて利用することが必要です。また、機能として標準ではサポートしていないため作れない、ということも場合によってはあり得ます。

そのような場合、サービスによってはプラグイン(機能追加)やカスタマイズ(プログラミング言語を利用)によって機能を拡張することも可能です。採用するサービスが機能拡張に対応しているかを確認しておくことも忘れないようにしておきたいです。

業務システム構築への慣れと時間が必要

業務アプリケーション作成サービスを使うことで自分で作れるようになるとはいえ、すぐに使えるようにはならず、簡単に作れるとはいえある程度時間を要します。また、サービス毎に構築する上での癖のようなものもありますので、その点を抑えながら理解を進めていく必要があります。癖を抑えながらアプリケーションを作らないと、使い勝手が悪くなり、後で作り直しになってしまう可能性もあります。

業務アプリケーション作成サービスを活用するもう一つの方法

業務アプリケーション作成サービスを利用して自社でシステムを構築する方法として、自分で作る方法以外に、一緒に作る、という方法があります。

中小企業が抱える課題

多くの中小企業は、そもそも人材が不足していて人員を割けなかったり、業務アプリケーション作成のための時間を確保できないという悩みを持っています。また、人員や時間を取れたとしても、システム活用の全体像を考えたりする点に慣れていなかったり、どうつくればいいかそもそも分からない、ということもよくあります。

業務アプリケーションを一緒に作る

そのような場合、システム導入・開発を専門に行っている会社に手伝ってもらい、一緒に作る、という方法があります。

これまではシステム開発会社に全てお願いするという形しかありませんでしたが、業務アプリケーション作成サービスの出現によって、アドバイスを貰いながら自分で作っていくという方法が出来るようになりました。一緒に作るスタイルとしては、次のような方法が考えられます。

  • 初期は時間が避けないため、システム会社にお任せして作ってもらう。導入後はアドバイスを受けながら自分で作れるようにスイッチしていく。
  • 始めからシステム会社と協力して一緒に作っていく。実現する上でこうしたいという悩みに対して専門家のアドバイスを受けながら自分で作っていくことで、自社のみで考えて構築するより早く効率的に進めることが可能になる。ナレッジも溜まっていくため、自社の社員が育つ。

どちらも習熟度を高めながら行うもので、社外IT専門家を持つイメージにも近いです。また、サービスの標準機のでは出来ないような機能を入れたい場合、専門家にその部分のみお願いするということも可能になります。また、各サービス毎に得意分野を持つシステム会社も多いですので、そこに依頼することで早く実現することも出来ると思います。

まとめ

アプリケーション作成サービスが色々と出現し、それを活用する企業がどんどん増えています。これに伴い、自社にあった業務システムを作るような場合、お願いする形から自分で作る(自社で作る)形へと今後徐々にシフトしていくと想定されます。

しかし、それには社内の人員と時間の確保が必要です。

これを解決する方法として「一緒に作る」という方法もありますので、自社で業務改善を進めてそれにあったシステムを作成・活用していく場合の参考になればと思います。


弊社では、業務アプリケーション作成サービスとしてkintoneを基盤としたシステム開発とアドバイスサービスを提供しています。
初めから全て自分で作ることは難しくても、最終的に自分で作る形を実現できるようサポートをしています。

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