全国的にDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、
中小企業の現場でも「何かデジタル化を進めなければ」という空気が強まっています。
クラウドツール、AIアシスタント、RPA、業務アプリ……。
導入直後は期待も高く、「これで生産性が上がる」と感じる経営者も多いでしょう。
しかし、数か月が経つと「思ったほど使われない」「現場が疲れている」という声をよく聞きます。
実際、わたしの身近な福島の企業でも、DXを進めた結果、社員がツールの切り替えや入力作業に追われ、
むしろ“業務が増えた”ように感じているケースも少なくありません。
いま、現場では「DX疲れ」という新たな課題が生まれているのです。

DX疲れはなぜ起こるのか
DX疲れの背景には、いくつかの共通した原因があります。
ひとつは、経営層と現場の“目的のズレ”です。
経営者は「効率化」や「データ活用」を目指してツールを導入しますが、
現場から見れば「やり方が変わった」以上の実感がないことも多い。
結果として「なぜこれを使うのか」が見えず、負担感だけが残ってしまいます。
もうひとつは、ツール導入を“ゴール”にしてしまうこと。
DXの本質はテクノロジーではなく、**「働き方を変えること」**にあります。
システムを導入した瞬間がスタートであり、その後に「どう使いこなすか」「どう文化に根づかせるか」が重要です。
それがないまま導入だけが進むと、現場は消耗していきます。
疲れないDXの進め方
では、どうすればDX疲れを防げるのでしょうか。
まず大切なのは、小さく始めることです。
いきなり全社導入するのではなく、ひとつの部署やチームで試してみる。
その中で「これなら続けられる」「こうしたら便利になった」という声を拾い上げてから、
全社展開する方がずっと定着しやすいです。
また、ツールの選び方も“現場主導”にすること。
導入する人と使う人が違うと、運用が長続きしません。
たとえば、福島のある製造業では、現場スタッフが中心となって業務アプリを比較検討し、
「実際に使いやすいか」を自分たちで判断していました。
その結果、ツールが“押しつけ”ではなく“味方”として定着したそうです。
さらに、KPIの設定も見直す必要があります。
導入件数やシステム稼働率よりも、**「現場の改善」「社員の納得感」**に焦点を当てること。
数字で測れない価値をどう育てるかが、DXを成功に導くカギです。
続けられるDXをつくる
最近では、「DX推進担当」を一人だけ置くよりも、
各部署に“デジタルアンバサダー”のような役割を設けて、横のつながりで進める企業も増えています。
福島の中小企業でも、経営層と現場が一緒に試行錯誤する姿勢が、長く続くDXを支えています。
デジタルは手段であって、目的ではありません。
ツールを導入すること自体ではなく、人が変化し続けられる環境をつくること。
DXとは、企業の体質を“デジタルを使いこなせる文化”へと進化させる旅なのです。
DXは“人が変わるプロセス”
DX疲れを防ぐ経営とは、
「システムを動かす」のではなく「人を動かす」ことを目的にすることです。
経営者がその意味を語り続け、現場が自分ごととして捉える。
その繰り返しが、デジタルの定着と成果につながります。
テクノロジーは企業を強くする力を持っています。
けれど、それを支えるのは、いつの時代も“人の理解と共感”です。
効率化の先にあるのは、人が働きやすく、誇りを持てる現場づくり。
そのためのDXこそ、これからの地域企業が進むべき道ではないでしょうか。
わたしたちは、そんな「人を主役にしたDX」の実現を、福島の企業のみなさまと共に考え、支えていきます。


