近年、中小企業にとってDX(Digital Transformation)は必須の取り組みとなっています。しかし、具体的なイメージが湧きにくかったり、導入方法がわからなかったりと、二の足を踏んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、中小企業の経営層向けに、DXを進める上で知っておきべきソフトウェアとインフラの基礎知識について、わかりやすく解説します。
ソフトウェアの開発方法
ソフトウェアの開発方法は、大きく3つに分類されます。
1. フルスクラッチ
顧客に合わせてゼロからプログラミングを行って、完全オーダーメイドでソフトウェアを構築する方法です。
メリット
- 自社の業務プロセスに合ったカスタマイズができる
- 将来的な変更にも柔軟に対応できる
デメリット
- 開発にコストと時間がかかる
- バージョンアップにコストがかかる
- 保守管理が複雑になる
2. パッケージ
特定業務・業種ごとに共通化された既成のソフトウェアのことです。
メリット
- コストが安い
- 開発期間が短い
- すぐに運用を開始できる
デメリット
- 業務をシステムに合わせる必要がある
- カスタマイズが制限される
- バージョンアップが制約される
3. SaaS(Software as a Service)
ノーコード・ローコードで構築できる、クラウドのソフトウェアのことです。
メリット
- 自社に合った最適なシステムを構築できる
- サーバなどの設備が不要
- バージョンアップで機能性が向上したり、セキュリティが強化される
デメリット
- 月額課金などのランニングコストがかかる
- インターネット環境が必要
- カスタマイズが制限される場合がある
プログラミングの必要度合い
ソフトウェアの開発方法によって、必要なプログラミングの度合いは異なります。
1. フルスクラッチ
フルスクラッチ開発では、ソフトウェアを動作させるソースコードをすべてゼロから作成する必要があります。そのため、高度なプログラミングスキルが求められます。
2. ローコード
ローコード開発では、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)と呼ばれるビジュアルな操作で、ソースコードをあまり書かずにソフトウェア開発ができます。そのため、プログラミング初心者でも比較的簡単に開発できます。
3. ノーコード
ノーコード開発では、ソースコードをまったく書かずにソフトウェア開発ができます。そのため、プログラミングの知識がなくても開発できます。
インフラの管理・運用方法
ソフトウェアを稼働させるためには、インフラの管理・運用も重要です。インフラの管理・運用方法は、大きく2つに分類されます。
1. オンプレミス
サーバやソフトウェアなどのIT資産を自社内に設置し、自社で管理運用する方法です。
メリット
- セキュリティを自社で管理できる
- システムを自由にカスタマイズできる
デメリット
- 初期費用が高くなる
- 場所が必要になる
- 維持・管理コストがかかる
2. クラウド
サーバやソフトウェアをクラウドサービス事業者に委託し、インターネット経由で利用する方法です。
メリット
- 初期費用が安い
- 場所が必要ない
- 維持・管理コストが低い
デメリット
- セキュリティをクラウドサービス事業者に依存する
- システムを自由にカスタマイズできない
ビジネス用ソフトウェアの種類
ビジネス用ソフトウェアは、様々な機能を持つシステムがあります。主な種類は以下の通りです。
1. マーケティング・営業(顧客回りDX)
- CRM:顧客企業・担当者・活動状況などの管理システム
- SFA:営業プロセスや商談内容などの管理システム
- MA:メルマガ配信・トラッキング記録機能を持つ販促システム
- 名刺管理:紙媒体の名刺を画像・テキスト化する名刺管理システム
2. ウェブ周り
- CMS:ウェブサイトのテキスト画像を編集・配信する管理システム
- EC:注文・受注・商品・売上・決済機能を持つ通販サイトシステム
- ログ解析:アクセスユーザーの各種情報を分析するシステム
3. 経営管理(管理DX)
- ERP:会計・人事・購買・在庫・販売・生産の統合システム
- SCM:在庫・販売・物流、原料や部材、製品の管理システム
- 会計:財務諸表や請求・入金などの管理システム
- 人事管理:勤怠・労務・人事評価・給与などの管理システム
- 販売管理:受注・在庫・出荷・売上などの管理システム
- 生産管理:原材料・調達・生産計画・工程・在庫などの管理システム
DXの潮流
DXの世界的な潮流は、「基幹系DX」と「顧客回り系DX」の2つを中心に「つなぐ」形で進んでいます。
1. 基幹系DX
基幹系とは、ERPと呼ばれるパッケージソフトを使うのが一般的になっています。この分野で最もシェアを有しているのがドイツのSAPという会社です。SAPは世界中の言語あるいは通貨に対応しているため、日本企業においてもグローバル展開しているような大企業は各国共通で、SAPを採用しているケースが多い。
日本の中小企業の場合は、国内ベンダーのERPを導入しているか、あるいは業界向けの販売管理システムと標準的な機能を有する会計管理システムと労務管理システムを組み合わせて導入しているケースが多い。
2. 顧客回り系DX
顧客回り系や、SalesforceやZohoといったクラウドSaaSプラットフォームを導入するケースが増えてきている。
3. 世界的な潮流
基幹系の分野をカバーするERP(あるいはパッケージソフト群)と顧客回り系の分野をカバーするクラウドSaaSプラットフォームを「つなぐ」考え方でDXを実現するという考え方が一般的。また、全ての業務を1つのシステムで網羅するのではなく、ビジネスプロセスのコアとなる中核的なシステムが合った上で、その業界の中でスタンダードとなっているようなシステムを「つなぐ」という考え方が一般的になっています。
このシステム同士を「つなぐ」ためのツールとして、API(Application Programming Interface)での連携や、昨今導入が進んでいるRPAが挙げられます。
中小企業のDX成功事例
中小企業でも、DXを成功させることで、様々なメリットを得ることができます。
1. 業務効率化
DXによって、これまで人手で行っていた作業を自動化したり、標準化したりすることで、業務効率を大幅に向上させることができます。
2. コスト削減
業務効率化によって、人件費や時間コストを削減することができます。
3. 新規顧客開拓
ウェブサイトやSNSなどのデジタルツールを活用することで、新規顧客を効率的に開拓することができます。
4. 顧客満足度向上
顧客とのコミュニケーションを円滑化することで、顧客満足度を向上させることができます。
5. 新規事業の創出
DXによって得られたデータを分析することで、新たなビジネスチャンスを発見することができます。
中小企業のDXを成功させるためのポイント
中小企業がDXを成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1. 経営層のコミットメント
DXは経営層主導で推進する必要があります。経営層がDXの重要性を理解し、積極的に取り組むことが重要です。
2. 明確な目標設定
DXは何のために取り組むのか、具体的な目標を設定する必要があります。目標を設定することで、進捗状況を管理しやすくなります。
3. 適切な人材の確保
DXを推進するためには、ITスキルを持った人材が必要です。社内に人材がいない場合は、外部から人材を確保する必要があります。
4. 段階的な導入
いきなり大規模なDXを行うのではなく、段階的に導入していくことが重要です。まずは、比較的簡単なところから始めて、徐々に規模を拡大していくようにしましょう。
5. 継続的な改善
DXは一度で完了するものではありません。常に改善を続けることが重要です。
まとめ
中小企業にとって、DXは大きなチャンスです。今回紹介した内容を参考に、自社に合ったDXを推進し、経営の成功を目指してください。